2004年MYベスト10

 去年は結局、年間で325冊を読破する記録的な年になったのですが日記で書いた「2004年MYベスト10」を再編集して残しておこうと思います。ランキングは「長編」と「短編」の2つの部門に分ける事にして「長編」は一般的な長編作品で何分冊かされているものも1冊としてカウント。「短編」は短編集に加えて「連作短篇集」も「短編」という扱いにしました。とりあえず、候補作を20冊ずつ選び取捨選択してベスト10を決めました(といっても、11位以下も順位決めたので正確にはベスト20なのですが/爆笑)



 長編部門 1位~20位

 1位・綾辻行人 『十角館の殺人』
私の読書スタイルを根本から変えた記念碑的作品。日本のミステリーの流れを大きく変え、全てはこの作品から始まったと言っても過言ではない歴史的名作。冒頭のエラリイのセリフには感涙。
 
 2位・小野不由美 『屍鬼』
全5冊と圧倒的なボリュームながら長さを全く感じさせない筆力と構成は圧巻。作品世界に吸い込まれ、最後まで本を手放させない魔力を秘めた名作。

 3位・西澤保彦 『依存』
シリーズの集大成的な位置にある作品でラストシーンは本気で泣けました・・・。この「タックシリーズ」を読めるのは至上の喜び。今年最も泣けた作品。

 4位・綾辻行人 『迷路館の殺人』
私が一番住んでみたい館「迷路館」を舞台に綾辻マジック炸裂。二重三重に繰り広げられる騙しのテクニックにラストまで目が離せない傑作。

 5位・西澤保彦 『麦酒の家の冒険』
3位の「依存」とは全く対照的に西澤保彦の真髄が味わえる作品。ビールを飲みながら繰り広げられる妄想の数々は見事としか言いようがない。個人的に大好きです、ハイ。

 6位・有栖川有栖 『月光ゲーム』
オーソドックスな「吹雪の山荘」スタイルながら見事に独自色を出せていると思います。この「学生アリス」は作品数が少ないのが本当に残念なシリーズの1つです。

 7位・天藤真 『大誘拐』
人の死なないミステリーとしては最高峰に位置する名作。かなり古い作品ですが、時代を感じさせない絶妙なテンポのストーリー展開はかなり楽しめました。

 8位・倉知淳 『星降り山荘の殺人』
この作品は完全に騙されました。冒頭からまんまと作者の術中に嵌り、謎解き部分で気付くまで完全に錯誤に陥っていました(苦笑)

 9位・山口雅也 『生ける屍の死』
ノンストップで繰り広げられる死者の蘇りと混乱の数々は凄まじいです。一歩間違えば完全なギャグにしかならない題材を見事に本格ミステリに仕上げる手腕は見事。

 10位・麻耶雄嵩 『痾』
シリーズ3作目にしてメルカトル鮎などのオールスターキャストが揃う作品。主人公・如月鳥有の駄目人間っぷりと終盤の暴走が大好きです(爆笑)

 11位・綾辻行人 『暗黒館の殺人』
圧倒的ボリュームの超大作。今年買った数少ない新刊本で、嬉しい嬉しいサイン本(笑)

 12位・麻耶雄嵩 『翼ある闇』
結末に唖然呆然。賛否両論あるだろうけど個人的には大好き。これがシリーズ1作目というのは凄過ぎ。

 13位・綾辻行人 『時計館の殺人』
途中でトリックが解った数少ない「館」シリーズの1つで、まさに「館」の原風景的作品。でも住むのはご勘弁を(笑)
 
 14位・小森健太朗 『ローウェル城の密室』
誇張でも何でもなく前代未聞の密室トリック。破天荒な設定は嫌いでないです。

 15位・有栖川有栖 『幽霊刑事』
結末は予想しえるものですが素直に泣けて笑えます。こういう小説を読めるのは幸せです。

 16位・西澤保彦 『実況中死』
超能力の扱い方が絶妙。今後も目が離せないシリーズの1つ。

 17位・二階堂黎人 『奇跡島の不思議』
探偵役はバレバレ(笑)少し不満の残る結末に評価は抑え目。期待は大きかっただけに残念。

 18位・森博嗣 『すべてがFになる』
理系ミステリの元祖で伝説的作品。トリックが予想の範囲内だったので順位は低め。

 19位・二階堂黎人 『聖アウスラ修道院の惨劇』
序盤から緊迫した展開も結末で大爆笑。探偵役・二階堂蘭子がドカベンだと判明(爆笑)

 20位・清涼院流水 『コズミック』
あらゆる意味で超弩級の作品。兄弟作『ジョーカー』と併せて読むと破壊力抜群。死ぬまでに一度は体験する価値あり。



 短編部門 1位~20位

 1位・泡坂妻夫 『亜愛一郎の狼狽』
個人的に大好きな探偵・亜愛一郎の登場する短編集。20年以上前に作者がデビュー作として書いたとは思えない完成度の高さは驚き。続編となる短編集が2冊あるのでそちらも早く読みたい。

 2位・鯨統一郎 『邪馬台国はどこですか?』
一般的に知られている歴史の謎に独自の新解釈を加える最高の与太話。各短編で繰り広げられる歴史検証バトルは本当に面白く、解釈の提示方法が秀逸だと言える。これは万人にお勧めの作品。

 3位・法月綸太郎 『法月綸太郎の冒険』
長編とは違い明るい法月綸太郎による短編集で、どれもレベルの高い作品ばかり。その中でも特に図書館を舞台にした一連の作品は秀逸。
 
 4位・若竹七海 『ぼくのミステリな日常』
社内誌に連載される小説を1月から12月の季節に合わせた謎とともに描いた連作短編集で、見事に成功した連作短編集の1つ。社内誌も中々に凝った作りで見ていて楽しい作品。

 5位・西澤保彦 『解体諸因』
バラバラ死体等の「解体物」に徹底的に拘った作品。これがデビュー作とは思えない程にタックやボアン先輩のキャラが立っているのは見事の1言です。

 6位・綾辻行人 『どんどん橋、落ちた』
表題作「どんどん橋、落ちた」には見事に騙されました。こういうトリッキーな短編も綾辻さんには書き続けて貰いたいと思います。

 7位・加納朋子 『ななつのこ』
北村薫を意識した作品ですが、オリジナルに負けない出来に仕上がっています。ただの二番煎じにならずに独自色を出せる力量は見事です。

 8位・麻耶雄嵩 『メルカトルと美袋のための殺人』
探偵役・メルカトル鮎の外道的所業と助手の美袋三条のやられキャラっぷりが見事な作品です。好き嫌いが別れそうですが、このブラックユーモアが堪らなく好きです。

 9位・北村薫 『空飛ぶ馬』
作者のデビュー作で日常の謎を扱った作品の先駆的作品集。中年男性が書いているとは思えない主人公である女子大生の繊細な心理描写と巧みな文章はまさに名人芸。

 10位・有栖川有栖 『ロシア紅茶の謎』
これは有栖川有栖らしい良質の短編を集めた作品集だと言えます。初めて読んだ有栖川作品でしたが、大いに楽しんで読めました。
 
 11位・法月綸太郎 『法月綸太郎の新冒険』
法月綸太郎は長編よりも短編が面白いと思う。長編を連続して読んでから手に取ったので「明るい」法月綸太郎が妙に新鮮。

 12位・折原一 『七つの棺』
パロディ気味ながらも要所は締められ十二分に楽しめる。密室大好きながらドジを繰り返す黒星警部等のキャラクターも魅力的。

 13位・二階堂黎人 『私が捜した少年』
幼稚園児が探偵という異色作。だけど、殺人事件などの本格ミステリの王道を行く作品。かなり好きなシリーズの1つ。

 14位・北村薫 『夜の蝉』
日常の謎を描く事に長けた北村薫らしい作品集。主人公の「私」を始め、作品内で多くの「人間」が生きているのを実感できる。

 15位・加納朋子 『ガラスの麒麟』
連作短編集という形態を最大限に生かして一連の流れを様々な視点から描いた稀有な作品。

 16位・二階堂黎人 『名探偵 水乃サトルの大冒険』
ギャグやパロディが多いながら探偵のキャラクターが事件の性質に見事にマッチして楽しんで読めた1冊。

 17位・法月綸太郎 『パズル崩壊』
名探偵・法月綸太郎は登場しないがレベルの高い短編を集めた作品に仕上がっている。やはり法月綸太郎は短編に向いた作家だと思う。

 18位・北森鴻 『花の下にて春死なむ』
ビアバーを舞台にした安楽椅子探偵物。流石に作者が調理師免許を持つだけあって作品内に出てくる食べ物はどれも美味そう(笑)

 19位・二階堂黎人 『名探偵の肖像』
様々な有名作家の贋作や対談、随筆を収録したボリュームある1冊。個人的に「素人カースケの世紀の対決」がお気に入り。

 20位・蘇部健一 『六枚のとんかつ』
バカミステリ短編集とでも言うべき作品。全編、下ネタやしょうもないギャグに満ちていながらも意外に楽しめる。真面目に考えずに読みたい。


 さて、最後に今年のランキングに言及しますと12月のベスト10製作後に読破した作品もランキングさせようと画策しているので現在、ベスト10に入りそうなのは「長編」では折原一「倒錯のロンド」「倒錯の死角 201号室の女」、殊能将之「ハサミ男」、西澤保彦「七回死んだ男」が「短編」では折原一「ファンレター」、加納朋子「魔法飛行」、鯨統一郎「九つの殺人メルヘン」が有力でしょう。
 まだ未読で上位に入ると予想している作品では有栖川有栖「双頭の悪魔」、二階堂黎人「人狼城の恐怖」、西澤保彦「念力密室!」が最有力で他にも泡坂妻夫の「亜愛一郎」シリーズや倉知淳の「猫丸先輩」シリーズが楽しみでなりません。まだ見ぬ作品に期待しつつ2005年も読書ライフを満喫したいと思う今日この頃です。


© Rakuten Group, Inc.